100本以上のオールドレンズを試した筆者が本気でおすすめするLeica Mマウントレンズ!フォクトレンダー「NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Aspherical」編
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はVoigtländer(フォクトレンダー)の中でもひときわデザインと描写が両立されているNOKTON Vintage Lineシリーズから、35mm F1.5 Asphericalをレビューしていきたいと思います。
NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Asphericalは、コシナVoigtländerが展開するVMマウントの35mm大口径単焦点レンズです。Leica Mマウント互換のVMマウントを採用しており、距離計連動式のLeica Mシリーズでそのまま使用することができます。
「明るい」「小さい」「よく写る」。この3つを高いレベルで成立させた本レンズが、Leica SL2-Sそしてフィルム機のLeitz Minolta CLと組み合わせた時にどのような魅力を見せるのか、早速見ていきたいと思います。
Leicaとは異なる小型軽量スナップシューター

■使用フィルム:FUJIFILM 200
35mmという焦点距離は、Leica Mを使う上では非常に重要な存在です。スナップでは広すぎず、ポートレートでは背景を残しながら被写体に寄ることができ、旅行や家族写真でも使いやすい。僕自身もLeica M10、M6やLeitz Minolta CLのどちらでも35mmを使う機会が多いのですが、そこで重要になってくるのが「レンズの大きさと重さ」です。
大口径の35mmは魅力的なレンズが多い一方で、どうしてもサイズと重量が増えてしまいます。実は今年執筆した香港旅行の記事で使用した、「Leica Summilux-M 35mm F1.4 ASPH.(FLE I)」は筆者のとっておきのレンズのひとつですが、フード付きで350g程度、長さは58mmと正直長時間持ち歩く旅行ではかなりのウェイト。そこで白羽の矢を立てたのが今回紹介する「NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Aspherical」だったのでした。
F1.4と遜色のないF1.5という明るさを持ちながら、全長36mmというコンパクトさ。重量はアルミ外装のType Iが188g、真鍮外装のType IIが284gとなっています。しかも両面非球面レンズを2枚採用した現代的な光学設計によって、絞り開放から高い描写性能を実現しています。
| 対応マウント | VMマウント(Leica Mマウント互換) |
| サイズ | 最大径Φ53×全長36mm |
| 質量 | Type I:188g/Type II:284g |
| 焦点距離 | 35mm |
| フォーカス | MF(マニュアルフォーカス:距離計連動型) |
| レンズ構成 | 6群9枚 |
| 対応撮像画面サイズ | 35mmフルサイズ |
| 最短撮影距離 | 0.5m |
| 絞り | F1.5-F16 |
| フィルター径 | 39mm |

全部で3種類リリースされており、TYPE Iが最も軽量。筆者もTYPE Iを使用。
特にM型ライカとの組み合わせで魅力的なのが、この「36mm」という全長です。M型ライカはボディそのものが比較的コンパクトなカメラですが、そこに大きな大口径レンズを装着すると、せっかくのM型ライカらしい携帯性が失われてしまうことがあります。その点、本レンズはM10やLeitz Minolta CLに装着しても前玉が大きく張り出すことがなく、カメラを構えた時のバランスも良好。Type Iなら188gしかないため、首や肩から下げて歩き続けても負担が少なく、まさに「持ち歩くためのF1.5レンズ」と言えるでしょう。
最短撮影距離は0.5mですが、距離計連動範囲は0.7mまで。0.5~0.7mではライブビューなどを利用したピント合わせが必要になります。平均身長の成人男性が腕を伸ばして手のひらで触れられる位置が大体0.5m程度なので、筆者はフィルム機でもF8程度まで絞って、0.5mで寄って撮影をしたりしています。

上の画像はLeica SL-2Sにヘリコイド付きマウントアダプターSHOTEN LM-LSL M IIの組み合わせです。SLシリーズと組み合わせることで、EVFを活用することができ使い勝手はさらに向上します。角型フードは社外品で、海外から輸入したものですが純正よりも似合っていると感じています。

一方こちらはM型フィルムライカでは最も小さいLeitz Minolta CL(Leica CL)です。CLと組み合わせて使用したく本レンズを購入しましたが、相性バッチリ!CLのファインダー枠は35mmと一致しているため、ファインダーを覗いて見える部分が大体写るという捉え方で良ければ、外付けファインダーを付ける必要はありません。

■撮影環境:f8 1/125秒 ISO100 WBオート

■撮影環境:f1.5 1/250秒 ISO100 WBオート

■使用フィルム:FUJIFILM 200

■使用フィルム:FUJIFILM 200
描写特徴と作例

■使用フィルム:FUJIFILM 200
本レンズの大きな特徴は、F1.5という大口径でありながら、開放から非常に高い光学性能を発揮することです。両面非球面レンズを2枚採用しており、クラシカルなデザインの中に現代的な光学設計が詰め込まれています。Vintageと名前が付いていますがその部分はあくまでもデザイン面のみで、実際に開放で撮影してみるとピントを合わせた部分はしっかりと解像しながら、背景は35mmらしい自然な距離感を残してボケていきます。
50mmや75mmのように背景を大きくぼかして被写体だけを切り取るのではなく、周囲の空気や場所を残しながら、ピント面を浮かび上がらせることができます。ポートレートはもちろん、家族写真や街中でのスナップでも非常に使いやすい描写です。
性能面においてはF1.5の開放からある程度シャープにはなるものの、中間域や四隅に関して解像度が低下する点に加え、比較的大きな光量落ちが見られます。描写の最高性能はF8に絞ったときで、開放ではパープルフリンジがやや見られる結果となっています。
また、F1.5という明るさは夜間や室内でも大きな武器になります。ISO感度を上げ過ぎずに撮影できるため、Leica M10ではもちろん、フィルム感度に制約のあるLeica M6やLeitz Minolta CLでも有効です。ここからは、その作例を載せていきます。

■使用フィルム:FUJIFILM 200

■使用フィルム:FUJIFILM 200

■撮影機材:Leitz Minolta CL + NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Aspherical
■使用フィルム:FUJIFILM 200

■撮影環境:f2 1/1000秒 ISO100 WBオート

■撮影環境:f1.5 1/50秒 ISO100 WBオート

■撮影環境:f1.5 1/100秒 ISO100 WBオート
Summilux-M 35mm f1.4 ASPHとの比較
35mmの大口径レンズを考える上で、どうしても比較したくなるのがLeica Summilux-M 35mm f1.4 ASPH。NOKTONを検討するうえで、金額差はあるものの誰もが比較をするレンズだと考えます。
現行Summilux-M 35mm F1.4 ASPHは、5群9枚、非球面1面、最短撮影距離0.4m、全長約46mm、重量約338gというスペックです。一方、NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Aspherical Type Iは188g、全長36mm。Summiluxよりも10mm短く、重量では150g軽量です。この差は、数字以上に実際の撮影で効いてきます。
先述しましたが、Leica M10に装着した状態で一日中首から下げて歩く場合、150gの差は決して小さくなく、Summiluxはギリギリのライン。もちろん、SummiluxにはLeicaならではの光学性能や操作感、そしてLeicaボディと組み合わせて所有すること自体の満足感があります。単純に「どちらが優れている」という話ではなく、Leicaがコストを二の次にして35mmの大口径レンズとして完成度を追求していくのに対し、NOKTONは「これだけ明るいのに、ここまで小さくできる」という方向へ進んでいると考えます。この差別化こそが、Summiluxを持っているのにNOKTONも買ってしまう大きな理由です。
Leitz Minolta CLにNOKTONを装着すると、非常にシンプルな撮影環境が完成します。35mm、F1.5、距離計連動、そしてフィルム。正にコンパクトライカと言えるような組み合わせです。フィルムを入れて街を歩き、気になった瞬間にファインダーを覗き、ピントを合わせ、シャッターを切る。この一連の動作を邪魔しない軽さこそ、本レンズ最大の魅力と言えるのではないでしょうか。
一方、Leica M10やSL2-Sではレンズの高い光学性能をデジタル写真として享受することができます。開放F1.5を積極的に使ってもよく、F5.6~F8程度まで絞ってスナップをしてもいい。「LeicaにはLeicaレンズ」という選択肢は誰もが認める正解ですが、純粋な使い易さ、撮影の軽快感としてみれば、NOKTONはかなり魅力的な選択肢と断言できます。
本項ではSummiluxとNOKTONの直接的な比較はしませんが、カラーバランスでいうとSummiluxはブルーベース、NOKTONはイエローベースという違いがあります。より透明感を写真に求めたい場合はSummilux、人肌の柔らかさ等を写真に求める場合はNOKTONという使い分けになるでしょう。ここからはポートレートの作例も見ていきます。

■撮影環境:f2 1/125秒 ISO100 WBオート

■撮影環境:f1.5 1/125秒 ISO100 WBオート
■モデル:suii

■撮影環境:f1.5 1/60秒 ISO100 WBオート
■モデル:音羽ねね

■撮影環境:f1.4 1/80秒 ISO100 WBオート
■モデル:suii、音羽ねね
まとめ

■撮影環境:f1.5 1/125秒 ISO100 WBオート
NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Asphericalは、F1.5という大口径、コンパクトなサイズ、そして現代的な高い描写性能という、一見すると相反する要素を非常に高いレベルでまとめたレンズです。特にType Iの188gという軽さは大きな魅力です。そして「デジタルとフィルムのどちらでも楽しめる」というMマウントのメリットは非常に大きなポイントと言えるでしょう。
Leica Summilux-M 35mm F1.4 ASPHのような銘玉とはまた違った方向性を持ちながら、Leica Mで使うための35mmとして非常に完成度の高い本レンズ。大きなレンズを持ち歩くことに少し疲れてしまった人、M型ライカをもっと軽快に使いたい人、そして「フィルムでもデジタルでも同じレンズを楽しみたい」という人には、ぜひ一度手に取って試していただきたいレンズです。「明るいレンズは大きくて重い」という常識を、35mmという最も身近な焦点距離で覆してくれる。NOKTON Vintage Line 35mm F1.5 Asphericalは、そんな一本なのではないでしょうか。
この記事でLeicaレンズにも興味を持っていただけたのであれば、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますのでぜひご覧ください。また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです。では、次の記事でお会いしましょう!
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。













